映画『藁の楯』 あらすじと感想と、ちょっとだけネタバレ

三池崇史監督、大沢たかお主演、映画『藁の楯』見てきました。





あらすじ

『この男を殺してください、御礼として10億円お支払いします。』

  日本の財界を牛耳る大物実業家、蜷川隆興(山﨑努)の7歳になる孫娘が惨殺された。容疑者は、8年前にも少女への暴行殺人を起こして逮捕され、仮出所したばかりの清丸国秀(藤原竜也)だった。全国指名手配され、警察による捜査が続けられていた。

  そんなある日、大手全国紙すべてに「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします。」という前代未聞の見開き全面広告が掲載された。それは、並外れた財力とコネクションを持つ蜷川の、周到に練られた復讐劇の始まりだった。「誰の目にも明らかな『人間のクズ』を殺せば、10億円が手に入る!」と、日本中がにわかに殺気立つ。

 新聞広告が掲載された直後、潜伏先で仲間に匿ってもらっていた清丸は、その仲間からも10億円目当てに殺されかけ、福岡県警に自首をする。清丸を東京の警視庁に移送するために選ばれたのは、警護課からSPとして2人、銘苅一基(大沢たかお)と白岩篤子(松嶋菜々子)、捜査一課から奥村武(岸谷五朗)と神箸正貴(永山絢斗)、福岡県警から関谷賢示(伊武雅刀)の精鋭5人。

 しかし、日本を縦断する清丸の移送は、予想をはるかに超える最悪の事態を引き起こす。旅客機による空路、高速道路や新幹線による陸路、あらゆる移送手段の前に立ち塞がる清丸の命を狙う群衆。殺人の現行犯として捕まったとしても、長引く不景気に困窮する国民にとって10億円はあまりにも大きな報酬だった。警視庁までの移送距離1,200km。送検までのタイムリミット、48時間。敵の数、1億2,000万人。ネット上では、どこから情報が漏れているのか、清丸の正確な現在位置を示すマークが点滅し続けている。

 もはや警察上層部も、自分たちの周囲を取り囲む機動隊も信用できない。いつ誰がどこから襲いかかってくるかわからない極限の緊張状態の中、5人のSPと刑事の孤独な戦いが続く。しかし、本当の敵は外部からの刺客ではなく、5人の中にある理性だった。移送中に、その残忍で狡猾な本性を露にする清丸を目の当たりにして、「この男を命がけで守る価値はあるのか?」「それが本当の正義なのか?」と自問自答を続ける5人。そんな5人の苦悩をあざ笑う清丸。はたして、彼らは無事に清丸を警視庁に移送することができるのか?

 やがて、物語は誰も予測できない衝撃のクライマックスを迎えることになる——。


クズの命は守る価値があるか

 『バトルロワイヤル』の頃から、脈々と一定の人気を集めているジャンルで、現実世界ではあり得ないような一定のルールのもと、登場人物たちが与えられた『ゲーム』をクリアする、という図式の映画で、その世界に没入していける人とそうでない人で、感想が分かれる作品かなあ、という印象を受けました。

 個人的にはこういう『ゲーム』を題材にしたストーリーがわりと好きなほうなので、そこそこ楽しむことができました。ただ良くも悪くも予告がセンセーショナル過ぎたというか、なんとなくストーリーが想像出来てしまったので、期待を裏切られるほどの衝撃という意味では物足りなかった気がします。

 一方で、作品のテーマとなっていたのが、『クズの命は守る価値があるか』という、ある種大きな矛盾を抱えた命題でした。娯楽作品ながらも、中心に倫理と正義の危うい価値観を持ち込むことで、映画に不思議な魅力を放たせている、そんな一面もある作品です。そのあたりは、ぜひ劇場で映画を観賞しながら、なんとなく考えてみると面白いかもしれません。




ちょっとネタバレ

 犯罪者である清丸国秀(藤原竜也)は、護送中にも少女を殺そうとし、別のシーンで実際に殺人を犯してしまいます。周り全てに裏切られ、清丸にも奪われ、それでも東京へ護送するために守ろうとする、銘苅(めかり:大沢たかお)の価値観の葛藤。僕は銘苅の価値観をあまり理解することが出来ませんでした。

 ちなみに、映画『SAW』や『ライアーゲーム』など、黒幕がいて大きな謎があって、といった類の映画ではないので、心理ゲームというよりは、主人公銘苅の心の葛藤を味わうのが主な醍醐味です。


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