風立ちぬ ネタバレレビュー  Le vent se lève, il faut tenter de vivre

賛否両論の宮崎駿監督作品最新作、『風立ちぬ』観てきました。

まだ観ていない方は、よほど興味がない限り読まないことをお勧めします、と前置いた上で。


関東大震災のあたりから戦前あたりまでを中心に描いた、ゼロ戦の設計技師である堀越二郎が主人公のストーリーです。

端的に言い表すなら、宮崎駿監督の壮大なオナニー映画でした。

映画『耳をすませば』にあったような、現実とも空想とも言い難いファンタジーなシーン、二郎とヒロイン菜穂子との恋の顛末、反吐が出るような『宮崎駿風の青春』など、観ていて寒気すら覚えました。

特に最悪だったのが、二郎と菜穂子との出会いのシーン。汽車のデッキの部分で、お互い違う車両から出てきたところを、風に帽子が飛ばされそうになったことがきっかけで出会うのですが、去り際に菜穂子がフランス語で「ル・ヴァン・ス・レーヴ」続けざまに二郎が「イル・フォ・タンテー・ドゥ・ヴィーヴル、風立ちぬ、いざ生きめやも、か」と。

明治時代の小説家かと。昭和初期の青春はこんな感じだったんでしょうか。

もう一つわけがわからなかったのが、著名な航空設計士「カプローニ」氏との邂逅です。映画の冒頭で、二郎の夢の中にカプローニ氏が現れるのですが、そこはカプローニ氏の夢の中でもありました。以降、物語の重要なシーンにはカプローニ氏と二郎の夢が度々登場します。

このあたりはさすがの宮崎駿で、もうファンタジーを観せられているのか、ゼロ戦技師のドキュメンタリー風フィクションを観せられているか、なんだかよくわからなくなっていきました。

終盤、菜穂子は結核で亡くなってしまうのですが、ゼロ戦の完成直前に単身サナトリウムへ旅立ってしまいます。実際の堀越氏は、妻も子供もおり、肺結核の女性との恋愛に関しては、堀辰雄さんの小説『風立ちぬ』から原案を拝借してきたようで、こうなってくるともう『宮崎駿が作りたかった作品を作った』という以外の何物でもない、そんな印象を受けた映画でした。



晩年のクリエイターは、往々にして自分の世界観を作品に投影しすぎて常人からは理解されないものですが、宮崎駿も既にそうなってしまっているのかもしれません。

青春へのコンプレックスをこじらせた老監督の次の作品やいかに。

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